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院長便り

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2007年2月1日(木) 森に住むインディアンの慣わし

宇宙人に扮したトミー・リー・ジョーンズが日本に来て日本人の習性を語るCMが放映されています。もしこの宇宙人にお金という概念がないならば、季節が変わるごとに前のシーズンに買った服や靴が破れて使えないわけでもないのに次々と購入し、いずれ例に漏れずタンスや下駄箱のコヤシにしてしまうことを裕福と勘違いしている人間を見てなんと語るのでしょう。「この国の住人は店頭に並んだものを自分のタンスや下駄箱に移動することに躍起になっている。特に同じマークのついたものを集めるのが好きらしい。」
もちろん衣食住に最低限度必要なものはありますが今の日本人はいかに多くの富を誇示できるかを競争しているかのように見えてなりません。又、政治も経済もこういった消費を良しとし、現代文明は消費の量によって評価される風調から脱することが出来ません。
消費というのは一種の中毒で、一度習慣となるとこれから逃れることはかなり難しいことのようです。しかもこの消費には多くの場合、資源の浪費と汚染が伴います。先月中旬の毎日新聞に掲載されていましたが地球温暖化により今世紀末には気温6.3度上昇、海水面58cm上昇と予想の上方修正?がされていました。(4度の気温上昇でも約三十億人が水不足に直面し、多くの水性生物が絶滅するそうです。)
十五年以上前だったと思いますが森林伐採による環境破壊を考える番組で、森をすみかとするインディアンのある部族が出てきて、「我々には森の木を一本伐ろうとする時にはその木を伐ることが七代のちの子孫に悪い影響を与えないか考えてから伐れという慣わしがある。」と言っていたのを記憶しています。
我々も何か欲しくなった時、すぐに手にする前に、その消費に伴う資源の浪費と汚染がせめて二代のちの子孫(孫の代)に悪い影響を与えないか考えてみる慣わしを始めねばならない時が今本当に来ています。

2007-02-01 09:24:00

2007年1月4日(木) 和光同塵

平成十八年十二月一日、僕の父方の祖母の妹にあたる方が亡くなりました。九十六歳でした。滝田歯科医院のカルテNo.1番の方でした。
故人は自分に子供を授からず夫が外で生ませた子を引き取り育てました。その子供は精神薄弱児でした。そしてそればかりか夫の死後も私費を投じ若竹学園という施設を設立し同じような子供を預り育てるということを続けました。暴れたら大の大人でも手のつけようのなくなる子供らを何人も、四十キロ程の体で。
故人は九十歳を超えたくらいから認知症が始まり、最後の数年間は富田林市にある特別養護老人ホームで過ごし、そこで甥らに見取られ最期を迎えました。よくある生き方だったでしょうか。故人の生涯を偲んでみる今、自分の半生の腑甲斐無さを痛感します。
「和光同塵」仏・菩薩が衆生に気づかれぬようそのまぶしい後光を和らげ煩悩の塵に同じて衆生を救済するという意味だそうです。故人は浄玻璃の鏡の前で閻魔様に「お勤めご苦労様でした。」と最敬礼され、極楽に往生される菩薩であったのかも知れません。
写経した般若心経に「一蓮托生」との願いを記し棺に納めさせていただきました。
今年こそともどもに実りある一年でありますようお祈り申し上げます。

合掌
 
平成十九年一月
 医療法人滝田歯科医院
理事長 滝田泰造

2007-01-04 09:28:00

2006年12月1日(金) リセット症候群

ホームビデオの整理をしていたら平成八年に撮った小学一年と幼稚園の年中だった娘達がパジャマ姿で画面に現れました。姉が手に黄色い半透明の時計のようなものを持ってビデオカメラに見せながら言いました。

姉「六月十日タマゴッチが死にました。」
母「いくつでしたか?。」
姉「八歳です。」
母「大事にしてあげてましたか?。」
姉妹「・・・・・。」

娘達は顔をクシャクシャにして涙をポタポタ落としながらテーブルの上に安置された亡骸に何度も合掌し詫びました。笑いをこらえ司会をする両親の声をバックにタマゴッチの葬儀はしめやかにとりおこなわれました。

テレビゲーム?を買い与えたのは後にも先にもタマゴッチだけです。本人達がともだちにたまたま聞いてリセットボタンの存在を知るまで、親はそれを教えませんでした。

昭和二十九年、インドで狼に育てられた少年が発見されたそうです。生肉しか食べないために発達したと思われる鋭利な前歯、光を嫌っていつも暗い所にうずくまる習性。その後少年はある病院で人間にひきもどすためのあらゆる努力がなされましたが、昭和四十五年結局人間にかえることなく野性のまま死んだそうです。

人間はある年齢に達するまでに「人間らしく生きる」様を多くの場合大人が、CG画像ではなく生身の姿でもって手本を見せて教えなければ、時を経て自然に獲得するものではないと最近つくづく思います。

何という動物に育てられたのかは不明ですが前述の狼少年に似た行動をとっている少年が群をなしているのを見たことがあります。コンビニの前で地べたに座りエサを食べて大きな声で吠えておりました。日本でも狂犬病の発生する昨今、見かけられた方は保健所までご連絡を。

2006-12-01 09:54:00

2006年11月1日(水) ニュース予報

「財務省は一日、日本国内の沿岸部指定地域における土地・家屋の一切の売買を禁止する通達を出した。これをうけ法務省は来年一月一日付けで当該地域の全ての登記を抹消すると発表した。これは地球温暖化による海面上昇に歯止めが掛からず、当該地域の水没が来年中にも始まることがほぼ確実となったためで、政府は国家命令を発動する。
なお当該地域における借地借家契約は一月一日をもって自動的に失効するが、住宅ローンの返済は国外移住をするもの以外には免責されないため、今後大規模な混乱が予想される。
外務省は国外移住先として中華人民共和国内陸地の有償提供を同国に打診しているが、同国内でも黄河と揚子江に挟まれた地域が洪水の際には溢れた水でつながってしまうといった状態のため、日本からの難民受け入れには難色を示している。」
西暦二〇××年、こんなニュースが報道される模様です。くれぐれも御留意下さい。

2006-11-01 09:58:00

2006年10月1日(日) 浄玻璃(じょうはり)の鏡

当院に来られる患者様で「悪い所は全部治したい。」とおっしゃる方には「では最短期間で最良の結果が得られるよう、現状を把握させていただくために一枚のX線写真を撮らせて下さい。」と告げて、幅30cm程のパノラマX線写真というものを撮ります。患者様には全く症状がなくても、神経をとる治療がきっちりとされておらず顎の骨の中に膿(うみ)の袋が出来ているもの、被せや嵌め込みの境界がきっちりと合っておらずそこから虫歯になっていたり骨のやせ(歯周病)が始まっているもの等々、患者様がいくら良く衛生管理しようと努力してもどうにもしようのない治療を施されているものが多々見うけられます。これらは歯科医師側の技術の未熟さや誠意の無さに原因があるとしか言いようがないというのが正直なところです。
複数の歯科医院で神経をとる治療を受けてこられたような既往のある方では、X線写真を一緒に見ながら「右上のこの歯と左下のこの歯は同じ歯科医院で治療されたでしょう。この歯とこの歯とは別の同じ歯科医院ではないですか?。」と僕がトランプの神経衰弱をするように指さしてゆくと患者様は片手に手鏡を持って自分の口の中の歯を指で触りながら、「確かにそうです。何故わかるんですか?。」と驚かれます。神経の治療に心血を注ぐ歯科医師ならすぐにわかることです。
「浄玻璃(じょうはり)の鏡」とは、死んだ後、閻魔(えんま)様の前で生前における善悪の所業を全て映し出す鏡だそうです。その鏡の前で、治療のことについてだけは、「おぬし、出来るのう。わしの歯を見ていってくれるか?。」と閻魔様に言わせてやろうと日々精進しております。

2006-10-01 10:02:00

2006年9月1日(金) 「知恵」と「智慧」

「農水省の調査では、宴会場で十六%、結婚披露宴で実に二十四%の食品が廃棄されている。ニ〇〇ニ年度の食品廃棄物は食品産業全体で千百三十一万トンと世界の食糧援助総量に匹敵する。」と二年程前の新聞に載っていました。
「お金は経済を体に譬えると血液です。これがスムーズに循環しないと日本は立ち行かなくなってしまいます。」というもっともらしい説得のもと、痛みを伴う様々な策が講じられた結果、最近の新聞には「景気拡大」という言葉をよく目にするようになりました。しかし、本当に正しい方向に我々は向かっているのでしょうか。
「最後の木の一本が切り倒され、最後の川が汚染され、最後の魚が捕らえられた後。そうなってはじめて金銭は食べられないと気づくだろう。」(クーリー・インディアンの予言)十年程前に発刊された本の冒頭に載っていた言葉です。
「知恵」生きていく上での学問・知識・役に立つこと
「智慧」仏様の心
コンビニでおにぎりやお弁当を買う時、賞味期限の遠い方を選んで買うのを「知恵」、近い方を選んで買うのを「智慧」と呼ぶのかもしれません。
「景気拡大」、この言葉の「景気」の部分に、「地球温暖化」・「海面上昇」・「人類存続の危機」、などという言葉を差し替えてそのつづきの記事を読んでも、矛盾しないで読めてしまうような「景気拡大」とならぬよう「智慧」ある行動をとりたいものです。

2006-09-01 10:05:00

2006年8月2日(水) 「status」

ステイタス。社会的地位・身分といった意味の言葉です。
十五年程前のバブルの頃、テレビで評論家が言っていた言葉でハッとさせられたものがありました。「日本の若い女性が自分のステイタスを主張しようとする時、自分がいかにたくさん有名ブランドの時計や服や靴や鞄を持っているか、どんな有名大学を出たどんなスポーツカーに乗った彼氏と付き合っているか、そういった事で表現しようとします。では西欧では同じくらいの年齢の女性がどうやって自分のステイタスを主張すると思いますか?」と、評論家は問いかけました。番組出演者は、日本人のする方法に輪をかけたようなケタはずれの方法かなと思っていました。テレビの前の僕も、自家用のジェット機を持っているかとか、家の屋上にヘリポートがあるかとか、そんな事かなと思ったんですが、答えは全く違ったものでした。
評論家はニコッと笑って答えました。「彼女らは、自分がいかに優秀なボランティア団体に登録されていて、そこでどんな奉仕活動をしているかによって自分のステイタスを表現するんですよ。ジーンズとTシャツの格好でね。」と。完全に一本とられました。
本物のステイタスを確立したいものです。

2006-08-02 10:06:00

2006年7月1日(土) 「コーヒーバネット」

平成元年の開院時より診察所では毎朝豆を挽きドリップでコーヒーを淹れております。ところが数ヶ月前からプラスチックのドリッパーにヒビが入り、コーヒーをうけるガラスポットの外面をコーヒーが伝い漏れる現象が起こっていました。開院以来、当院の歯科技工をうけおっていただいている技工士さんがそれを見て、「おもしろいドリッパーがありますよ。」とホームページのアドレスを送ってきてくださいました。早速注文し数日後に届いたそのドリッパーで今までどおりに落としてみると「なんと昨日までコーヒー豆に気の毒なことをしていたんだろう。」と思うくらい深いコクと香りが出ました。使う水も豆もコーヒーミルもペーパーも同じ。ドリッパーの形状が少し違うだけで。
実はこの違いはそっくりそのまま保険の歯科治療にもあてはまります。使用する材料、器具、方法、治療費が同じであっても、その治療結果は耐用年数など数値にあらわせる所だけでなく、血流等を介して全身に与える影響となると測り知れない程の差がついていることがあります。

2006-07-01 10:08:00

2006年6月1日(木) 「覚知にまじわるは証則にあらず」

相田みつをさんの「にんげんだもの」の中に紹介されていた道元禅師のことばです。相田氏は「意識したものにほんものはない。」と訳されていました。空気や水を意識する時は、それらが汚れている時だという意味です。
健康に関しても同じです。具合のいい時には「具合」という意識さえ存在しません。当院で歯に詰めたり被せたりする時、「今どの歯を入れたかわかりますか?」という風にお訊きします。患者様の最初の返事が「わかります。」だったのが、ごく僅かずつ調整をしていって「わからなくなりました。」とお答えになる状態が当院の「証則」です。

2006-06-01 10:12:00